(1)擬スピン自由度をもつ強磁場2次元系の基底状態、(2)サイクロトロン共鳴実験による強相関2次元系の金属絶縁体転移の解明、(3)吸着原子により誘起した劈開表面2次元電子系の形成機構の解明と新物性の探索、の3つのテーマについて研究を行った。 (1)に関しては、軌道量子数とスピン状態が異なる2つのランダウ準位の交差について、これまでの電気伝導測定に加えて、電子スピン共鳴からもスピン磁化率や横緩和時間などに関する知見を得るべく測定系の改良に着手した。 (2)に関しては、2次元面に平行な磁場によりスピン偏極させていく過程において、サイクロトロン共鳴の散乱緩和時間を電気伝導から得られるものと比較すべく、スピン偏極用のヘルムホルツマグネットとサイクロトロン共鳴実験用のソレノイドマグネットを組み合わせたシステムの製作に着手した。また、これまで低磁場下で行われた実験において、サイクロトロン共鳴と直流電気伝導測定から得られる散乱緩和時間が似通った金属的温度依存性を示していたことを受け、中間の周波数帯(0.1~1GHz)での電気伝導率の測定を行い、金属的温度依存性を支持する結果を得た。 (3)に関しては、劈開表面上の吸着原子の観察を行うため、走査型トンネル顕微鏡(ヘッド、コントローラ)を導入し、極低温・超高真空中において、(a)半導体試料の劈開、(b)ドナー原子の真空蒸着、(c)表面観察と側面電極を用いた面内電気伝導の同時測定、を連続して行うためのシステムを製作した。
|