研究課題/領域番号 |
21244048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小森 文夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (60170388)
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研究分担者 |
中辻 寛 東京大学, 物性研究所, 助教 (80311629)
田中 悟 九州大学, 工学系研究科, 教授 (80281640)
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キーワード | グラフェン / スピン分裂 / 電子励起 / 光電子分光 / 走査トンネル顕微鏡 |
研究概要 |
シリコンカーバイド(Sic)上のグラフェンおよび金とスズ(Sn)が吸着したゲルマニウム(Ge)表面を対象に、電子状態ダイナミクスと原子移動ダイナミクスを調べるための研究を継続した。研究協力者とともに、フェムト秒時間分解角度分解・内殻光電子分光装置を整備し、パルス幅30fsec,3eVと60eVのパルス光によるポンプープローブ光電子分光測定を行った。この装置に取り付けた超高真空試料準備容器中で、SiC上のグラフェンをアニールして表面を清浄化した後、その非占有π^*電子状態の寿命を時間分解で測定した。SiC上のグラフェン作成には、前年度に行った方向とは30度異なる方向に微傾斜した基板を用いた。この基板で作成温度と雰囲気を最適化することにより、規則性のよい1次元ポテンシャル変調を持つグラフェンを作成することに成功した。光電子分光装置の真空紫外光光源を改良し、この試料のπおよびπ^*電子バンドの形状と光電子スペクトル線幅を測定した。これにより、バンド形状と電子散乱がステップ密度に大きく依存していることとがわかった。超高真空極低温走査トンネル顕微鏡(STM)を改良して用い、トンネル電子励起による原子移動確率を、Snとシリコン(Si)が吸着したGe表面で比較した。SnとGeでできた表面ダイマーの方がSiとGeでできたダイマーよりも移動確率が低いことを明らかにした。金吸着Ge(001)表面では、1次元鎖の中心の原子配列に格子の8倍周期があり、その金属電子状態にも同じ周期の変調があることを、STMを用いて明らかにした。また、微傾斜Ge(001)表面にシングルドメインの1次元鎖を作製する方法を確立し、1次元鎖の方向とバンド分散の大きい方向の関係を明らかにした。金吸着Ge(111)表面では、微傾斜面を用いることにより、新しい1次元構造を作製した。また、これらのGe表面には、室温で熱的に運動する原子をSTMによって観察した。
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