研究概要 |
我々は,本年度軟X線回折装置に導入するための10テスラ級の縦磁場パルスマグネットを設計した.3月にテスト実験をする予定である.定常磁場用の超伝導磁石は実験予定であったが,電極部の不具合のため修理を行っている.残念ながらまだ実験を行っていない. 1.昨年度,構造カイラリティを絶対的に円偏光の極性から決定するために,ベルリナイト(AlP04)およびテルルの実験を行った.今年度は,磁気カイラリティに注目し,その絶対構造を決定する実験を行った.実験手法は円偏光X線による共鳴軟X線回折である.この研究のため阪大基礎工学研究科の木村研究室との共同研究を実施した.用いた物質は六方晶フェライトBa0.5Sr1.5Zn2Fe12022[ZnY(x=1.5)]である.これは,マルチフェロイックスのひとつであり,比較的高温で磁気電気的効果が現れる.この磁気構造はc軸にそってらせん構造となり,右,左のカイラリティが存在する.大きさが数ミリメートルの表面からの磁気反射を測定したところ,(003-)磁気反射が磁気カイラリティの違いまたはX線の円偏光の極性によって反射強度が反転することが明らかになった.さらに我々の装置では集光ミラーを導入しているためビームサイズが数十ミクロン程度と小さい.そのため,試料表面をスキャンすることによって,二次元磁気カイラリティドメイン分布がきれいに観測できることが判明した. 2.CuFeO_2は三角格子を有する反強磁性体である.この物質は磁場中や添加物を加えることで強誘電性を示すことが示され,注目を浴びている物質である.昨年度は,この物質の強誘電性の起源を探るため,FeのL吸収端において共鳴X線回折実験を行い,軌道秩序に起因する衛星反射を観測した.今年度は,円偏光X線を用いて印加電場が軌道秩序のカイラリティ構造に及ぼす影響を観察した.
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