研究課題
本研究では、マルチフェロイック物質RMn_2O_5の磁気的・構造的・誘電的性質を解明してその巨大電気磁気効果の起源を解明する。平成21年度は次のことを実施した。(1)高効率測定を可能とする大型中性子2次元カウンターを韓国原子力研究所と開発してきたが、最終的な装置テストを現地で行い、今回の研究のための設計、発注と納入を行った。(2)RMn_2O_5では多数の磁気相互作用が存在し、この競合的な相互作用とフラストレーションにより様々な長周期磁気構造が発生する。Mn^<4+>O_6鎖内相互作用によるカイラル磁気構造と、Mn^<4+>O_6鎖を結ぶMn^<3+>O_5による磁気相互作用が提案されているが、これを明確にするためにYMn(Mn_<1-x>Ga_x)O_5混晶系を作成して中性子4軸回折装置で研究した。これは、Mn^<3+>O_5を磁気モーメントを持たないGa^<3+>O_5に置換することにより、Mn^<3+>O_5の役割を明確にすることが出来ると期待した実験である。Ga原子の入るサイト、実際に置換した量、原子間距離と間の角度の組成変化を単結晶中性子構造解析でまず明確にした。さらに、磁気伝搬ベクトルの温度変化、誘電率と電気分極の温度変化、帯磁率の温度変化から詳細な温度組成相図を作成した。その結果、Gaで希釈すると磁気整合・強誘電相が消滅することが判明した。このことにより、Mn^<3+>O_5を介した相互作用の働きと磁気整合・強誘電相の起源の一部が明らかとなった。(3)TmMn_2O_5の磁場による電気分極のb軸からa軸方向へのフロップ現象を誘電率、電気分極、偏極中性子回折で詳細に調べPhys.Rev.Letに掲載された。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件)
Phys.Rev.Lett 103
ページ: 077204-4