研究概要 |
原子(分子)の近くに他の原子(分子)集団が存在する環境は、ファンデルワールスクラスター、水素結合クフスター、金属原子を注入したフラーレン等のナノ構造体、溶液中の分子や生きた細胞内の生体分子等、ごく一般的に是られる。このようなナノメートルスケールの系での原子から原子へのエネルギー移動・電荷移動の機構を解明することは、原子分子物理学の視点から非常に興味深い課題であるだけでなく、ナノ科学の重要な命題であり、生体機能や生体内の信号伝達を理解するためにも重要である。本研究では原子と原子集団とを2種類の希ガス原子の組み合わせを用いてモデル化し、希ガス異核2量体、3量体、2相混合クラスターについて、一方の原子(例えばAr原子)に生成した電荷とエネルギーが"環境"を構成する他方の原子(例えばNe原子)またはその集団に移行する過程を解明する。 特定の原子サイトに選択的にエネルギーを注入して電荷を発生させるために、単色軟X線放射光による原子選択内殻イオン化または極紫外自由電子レーザー(FEL)による原子選択多重イオン化を行う。ターゲット試料を超高真空中に導入し、放射光またはFEL光と交差させ、放出される電子とイオンの3次元運動量を多重計測し、これによって得られる各粒子間のベクトル相関から、原子レベルでの電荷移動・エネルギー移動の機構を明らかにする。 本年度の成果は以下のように要約される。 ・XeクラスターのFELによる多重イオン化実験を行った。本実験により、FELを用いた電子分光,多重イオン運動量分光、電子・イオン同時計測実験等のフィジビィリティを試験した。 ・希ガス異核2量体や混合クラスター生成のためのクラスター源を開発した。これを用いて、放射光やFELを用いた実験を開始した。
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