研究概要 |
SPring-8の軟X線ビームラインBL27SUにおいて、冷却クラスター源を電子・イオン多重同時計測運動量分光装置に取り付け,希ガス2量体NeArのNe 1sおよびAr 2pイオン化実験を行い、オージェ緩和後に起こる原子間クーロン緩和(ICD)を電子・イオン多重同時計測法により観測した。NeKL1L23オージェ遷移後に起こるICD過程Ne^<2+>(2s2p^5 ^1S)-Ar->Ne^<2+>(2p^4 ^1D)-Ar^+(3p^5 ^2P)が核の運動と競合して起こること、電子スペクトルを理論計算で再現するためにはICD速度を2/5まで減少させる必要があることを見出した。ArLM1M1オージェ遷移後には原子間距離が縮んだ後に3電子が関与する3電子ICD Ne-Ar^<2+>(3s^02p^6 ^1S)->Ne^<2+>(2p^5 ^2P)-Ar^+(3p^4 ^3P)が起こることを見出した。この電子ICDは世界で初めて観測されたものである。さらに本実験の遂行の間にAr_2量体の3重光イオン化状態から起こるICDと電子移動型電子緩和(ETMD)とを見出した。ETMDの理論的な予想は約10年ほど前にされていたが、今回、世界で始めて観測に成功した。 SPring-8のEUVFEL実験施設において、冷却クラスター源と電子・イオン運動量分光装置を用いてNeクラスターとXeクラスターの多重イオン化実験を行った。光子エネルギーがイオン化エネルギーよりも高い場合のXeクラスターの電子スペクトルからはクラスターの多重イオン化が進むとイオン化の抑制が起こることを確認した。一方、光子エネルギーがイオン化よりも低い場合のNeクラスターの電子スペクトルからは多重励起されたクラスターが電子緩和により電子を放出してイオン化が促進すること等を見出した。
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