本研究は極低温原子およびBEC原子を用いた原子干渉計によって高精度な量子計測法を実現することを目標としたもので、前年度(H21)に引き続きコヒーレント原子源として全光学的な手法を用いたRb原子のBEC生成装置の開発を行い、さらに今年度(H22)はレーザー冷却原子と光定在波パルスを用いた実験を行った(中川)。全光学的BEC生成に関しては低速原子線源を用いたダブルMOTの真空装置が完成し、従来の真空装置の問題点であったトラップ原子数およびトラップの寿命が大きく改善された。この新しい真空装置を用いて前年度と同様に光双極子トラップ中での蒸発冷却を行い、200nK以下の温度が実現できているがまだBEC生成には至っていない。今後さらに実験条件の最適化を行ってBEC生成を目指す予定である。 一方、BECを原子干渉計などの精密計測に用いる場合、従来のBEC生成法では生成時間が3秒以上かかるためこれを短縮して連続的に生成する方法の実現が望まれていた。このため今年度から連続的なBEC生成法の開発にも取り組んだ。真空装置および原子の移送に必要なレーザー光源の開発が終わり、磁気光学トラップ(MOT)と圧縮MOTを空間的に分離して時間的に同時に行う系の実現を目指して実験を行った(岸本)。 従来のレーザー冷却Rb原子を用いた原子干渉計の開発にも着手し、応用上重要な高精度な絶対重力加速度計の実現を目指して実験装置の準備を行った。今年度は非磁性材料によるチタン合金製の真空チェンバーの開発およびラマン遷移を用いた原子干渉計に必要な2台の半導体レーザーの光位相同期の開発を行った。
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