研究概要 |
背弧海盆における海洋底拡大の形態は、拡大軸と島弧火山列との距離により変化することが指摘されており、その形態変化はメルトの供給量が主要なパラメータであることが明らかになってきた.メルトの供給量は、その供給源である拡大軸下の溶融帯が支配しており、溶融帯の実体に迫ることがこの系のダイナミクスを理解する鍵となる.本研究のコアである、海底における長期電磁場観測を、ラウ背弧海盆の拡大軸付近で平成21年12月から実施していた.この観測では、コロンビア大学ラモント・ドーティー地球科学研究所の海底地震計に取り付けた海底磁力計11台と、独立している海底電位差磁力計6台を使用した.本年度は、11~12月に実施したハワイ大学の研究調査船R/V Kilo Moanaによる航海で、これらの観測に使用した機器をすべて無事回収できたことが最大の成果である.観測機器から取り出した電磁場データの取得状況を確認し、個々の機器による測定値の校正とこのデータ解析を開始した.一方、今後の地下比抵抗構造解析に使用する解析手法の開発も進めた.具体的には、MT(マグネトテルリック)法のインバージョンにおいて、外れ値となるMT応答関数をその統計分布にもとづいて取り除き、より信頼できる地下比抵抗構造を推定する手法である,この手法を合成データと実際の観測データに適用し、その有用性を示した.また、ラウ背弧海盆の比較研究として、中部マリアナ背弧海盆での海底電磁場観測データの解析から得た上部マントル比抵抗構造の研究を進め、その結果を学術論文として公表した.さらに、今回のラウ背弧海盆拡大系における長期海底電磁場観測の概要とこれまでの結果を関連する研究集会で報告をした
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