研究課題/領域番号 |
21244073
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
磯辺 篤彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00281189)
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研究分担者 |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (10322273)
武岡 英隆 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90116947)
二村 彰 弓削商船高等専門学校, 商船学科, 准教授 (90332080)
加 三千宣 愛媛大学, 上級研究員センター, 上級研究員 (70448380)
吉江 直樹 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
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キーワード | 急潮 / JCOPE2 / FVCOM / アンサンブル予報 / ARGO / 海底設置型ADCP / 急潮巡回観測 |
研究概要 |
JCOPE2再解析データを境界条件にして、月平均ASCAT衛星風観測データで強制した有限体積法沿岸海洋モデル(FVCOM)を、豊後水道における急潮のハインドキャストに用いた。またJCOPE2予報モデルと気候風を強制力にしたアンサンブル予報を、2か月間のハインドキャスト計算によって得た海況を初期値として、その後の3か月間で実施した。2010年4月より同年9月までの急潮予報計算を、実海域における水温連続観測データと比較することで精度検証を行った。その結果、豊後水道における急潮発生の予報精度は、台風の通過後に著しく低下することが分かった。このことは、JCOPE2で精度補償される外洋側の境界条件に加えて、一日程度の時間分解能をもった気象データが、急潮予報の精度向上には必要であることを示唆する。本年度は、FVCOMとJCOPE2を組み合わせたモデルを紀伊水道にも適用することで、黒潮系水の同水道への侵入過程を検証する基礎実験も実施した。さらに、急潮発生が予報される時期(7月)に、愛媛大学沿岸環境科学研究センターの調査船「いさな」を用いた豊後水道の巡回観測を、数日に一度の程度の頻度で二週間にわたって継続実施した。CTD観測、栄養塩、動植物プランクトン等の沿岸環境の広範囲にわたる項目を観測した。その結果、昨年と同様に、急潮侵入開始後の数日のスケールで、栄養塩や動・植物プランクトン組成や体長組成に変化が見られ、急潮が短時間での沿岸環境の変遷を支配する事実を確認した。さらに、対トロール用の金属枠を取り付けた海底設置型ADCPを宇和島沖75mの海底に設置し、6月かち10月の4か月にわたる流速観測に、昨年に引き続き成功した。測流データから、少なくとも秋季までは、急潮時における上層の北流発生と、それから数日を置いての下層での北流発生が、ペアになっている事実を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、急潮予報のシステムを完成させ、このシステムを利用しての急潮巡回観測を二年続けて実施した。急潮予報に関しては既に二報の査読付き国際学術誌(JGRとOcean Dynamics)にて公表している。ただし、予報精度には改良の余地があり、また、巡回観測のデータは現在解析中であって論文での公表に至っていない現況を鑑み(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
日変化する風データや潮汐データを与えた予報モデルに発展させ、急潮予報モデルの精度向上を図る。また、これまで取得した急潮巡回観測の生物データや栄養塩データを取りまとめ、関連学術誌での公表を進めていく。
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