研究課題/領域番号 |
21244074
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
斉藤 和雄 気象庁気象研究所, 予報研究部, 室長 (70391224)
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研究分担者 |
瀬古 弘 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (60354445)
青梨 和正 気象庁気象研究所, 台風研究部, 室長 (50354444)
村山 泰啓 情報通信研究機構, 電磁波計測研究センター, グループリーダー (00359001)
古本 淳一 京都大学, 生存圏研究所, 特定助教 (10402934)
岩崎 俊樹 東北大学, 理学研究科, 教授 (80302074)
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キーワード | 局地豪雨 / データ同化 / 雲解像モデル / アンサンブル予報 / 4次元変分法 / アンサンブルカルマンフィルタ / 稠密観測 / 予測信頼性 |
研究概要 |
平成22年度の成果をもとに、初期値解析手法、観測データ同化手法、雲解像アンサンブル手法を豪雨の予測に応用するための開発を行った。 1 先端的雲解像同化手法の研究 非静力学モデルを用いる4次元変分法(NHM-4DVAR)では、現業メソ同化システムとの親和性を高めるためめ観測演算子の組み込みなどを行った。アンサンブル予報を用いた雲解像モデル(CRM)の変分法的データ同化法については、先行研究で提案されている、サンプリング誤差抑制のアイデアの前提条件がCRMのアンサンブル予報誤差で成り立つか調べた。局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)の開発では、低解像度のLETKFにノーコストスムーサーを用いる2wayネストシステムを開発した。 2 局地豪雨の観測とデータ利用手法の研究 情報通信研究機構が開発したドップラーライダーによる動径風観測データを、NHM-4DVARを用いて同化するための観測演算子を開発した。さらに本観測演算子を用いて実際の豪雨事例に対してデータ同化実験を行い、ドップラーライダー動径風の他、レーダー動径風、反射強度、GPS可降水量を同化し、現実に近い豪雨を再現・予報できた。2008年9月5日の堺市に発生した雷雨について、LETKFを用いたネストシステムを用いて、GPS可降水量や視線水蒸気量、ドップラーレーダの水平風や動径風のインパクトを調べた。その結果、これらの高解像度のデータを同化すると、降水予報が改善することがわかった。 3 雲解像アンサンブル手法の研究 2008年8月5日の首都圏豪雨と平成23年新潟福島豪雨、平成23年台風12号の豪雨などについてメソアンサンブル予報と雲解像アンサンブル予報を実施し、それぞれの事例について、降水強度別確率予報の分布図を作成するとともに、メソスケールモデルによる予測可能性が大規模場の強制の有無によって事例に依り大きく変わることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期値解析手法、観測データ同化手法、雲解像アンサンブル手法のそれぞれにおいて、開発と研究が進展しており、当初計画の目標を達成している。具体的には、H23年度に計画していたアンサンブル予報を用いた変分法的データ同化法による実データ実験の実施、局所アンサンブル変換カルマンフィルタによる豪雨同化実験の継続と適応型の共分散局所化手法の検討を行った。またGPS視線遅延量、レーダー反射強度、衛星マイクロ波放射計、RASSデータ、ライダー動径風等について、4次元変分法・局所アンサンブル変換カルマンフィルタによる雲解像モデルへの同化による豪雨再現実験を行った。またアンサンブル予測に基づく局地豪雨予測への予測信頼度や誤差の定量化を行った。一方、地上設置マイクロ波放射計データ・二重偏波レーダーの同化実験については取り組みが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
初期値解析手法、観測データ同化手法、雲解像アンサンブル手法のそれぞれにおいて開発と研究を継続する。アンサンブル予報を用いた雲解像モデルの変分法的データ同化法については、CRM用のサンプリング誤差抑制手法を開発し、そのインパクトを調べる。また、雲解像非静力学4次元変分法においてアンサンブル予報による流れ依存の予報誤差を取り扱うよう検討を進める。局地豪雨の観測とデータ利用手法の研究では、首都圏の稠密観測データを用いて引き続きデータ同化実験を実施していく。雲解像アンサンブル手法の研究では、強雨の確率予測の検証を進める。
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