研究課題
約40億年にわたる地球と生命の共進化過程を研究する上で最も強力な化学化石である生体元素(水素・炭素・窒素・酸素・硫黄)の安定同位体比は、ごく限られた微生物種の実験室内条件での微生物代謝の分別効果を基準として、その解釈が行われてきた。「果たして限定例から導かれる基準は正しいのか?様々な環境での微生物作用に一様に適用可能なのか?」。本研究は、この疑問に明解な解答を与えることを目的とする。さらに、地球と生命の共進化過程のみならず、現世の物質循環の解明において未知の部分である極限環境における微生物作用の寄与を考える上で必要不可欠な基準である生体元素同位体分別・平衡効果の体系的研究を目的とする。当該年度には、MAT253同位体比質量分析計を購入し、そのシステムの構築を行った。システムが構築され、実際の実験試料の解析を進めつつある。その結果、「水素消費、水素生成微生物代謝に伴う水素同位体平衡効果」に関する結果について、充分なデータが蓄積された。また一方、「硫黄還元菌による元素状硫黄から硫化水素生成に伴う多種硫黄同位体分別効果」については、すでにいくつかの菌で分析が終了した。現時点では^<34>Sに関して-5‰程度の分別効果が認められるという成果が得られた。さらに、当該年度には「硫黄不均化菌による元素状硫黄から硫化水素及び硫酸生成に伴う多種硫黄同位体分別効果」の実験を進めるための、新規硫黄不均化菌の生理学的特徴を明らかにした。本菌は、全く新しい硫黄不均化代謝を有し、その増殖に伴う元素状硫黄の消費及び硫化水素生成、硫酸生成が定量された。
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Environmental Microbiology
Proceedings of The 4th International Symposium on Isotopomers, Tokyo
ページ: 26-30