研究概要 |
本科研費を用いて平成21年3月に東京工業大学に導入した全真空型の顕微FT-IR装置を用い、平成24年度は含水鉱物及び無水鉱物(nominally anhydrous mineral)中のOHおよびH2Oの検出と定量分析を行った。技術開発の結果、浜田は斜長石中の微量の含水量の定量分析によるマグマ脱水過程の解明した(Hamadaほか2011 EPSL誌)。さらに浜田らはこの手法を用いて含水マグマと斜長石間の水の分配平衡関係を解明し伊豆大島玄武岩マグマに5wt%以上の水が含まれていることを初めて明らかにした(Hamadaほか2013 EPSL誌)。伊豆大島、三宅島、富士火山の岩石学的研究成果から、日本列島の玄武岩マグマの含水量について高橋が2度の招待講演を行った(2012年5月地球惑星科学連合大会、および2012年9月鉱物科学会)。 地球初期進化に果たしマグマオーシャンの結晶化を定量的に議論するため、鈴木敏弘、高橋と大学院生の今井崇暢は鉱物とペリドタイトマグマ間の微量元素の分配係数の圧力依存性を決定し、その成果は国際誌Phys. Earth Planet Interに2編の論文として発表した。 Suzuki et al, 2012, Imai et al, 2012。これらの研究の結果、従来圧力による変化はないと考えられてきた結晶とシリケイトメルトの微量元素分配係数に明瞭な圧力依存性があり、高圧になると特定の結晶の配位置換席に入る元素の分配係数のイオン半径依存性が小さくなることが明らかになった。これは結晶席の「見かけヤング率」が高圧になると低下する(柔らかくなる)ことを意味するがそれは結晶全体が高圧下で圧縮されることと矛盾している。Imai et al, 2012はこれまで無視されてきたメルトのイオン席のヤング率を導入することによりこの矛盾が解消できることを示した。この結果、マグマオーシャンの広い圧力範囲のもとでの微量元素分配係数の圧力依存性を推定する道が開けた。
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