研究概要 |
前年度試作した,イメージング・ラマン分光装置の概要を,「音響光学的可変フィルター(AOTF)を利用したイメージング・ラマン分析装置の開発」と題して,日本地球惑星科学連合2010年大会(千葉・幕張メッセ)でポスター発表をした.そして,実用化する際の問題点として,(1)試料を作成する際に用いる樹脂からの傾向が予想以上に強く,SN値が極めて小さくなることおよび,(2)励起光の強度が試料面上で均一でない点などを説明して,参加者と解決方法を議論した.このうち(1)に関しては,用いる樹脂の種類だけではなく,固化させる際の温度や固化速度も蛍光の強弱に大きく影響することが明らかとなり,使用目的に合った樹脂選択のみならず,試料の最適な調整条件をほぼ決めることができた. (2)の問題点については,当初対物レンズの選定など本体の設計を一部変更することで改善を試みたが,最終的には対応できないことが明らかとなった.そこで,最終的には画像処理によって解決することとして,処理プログラムの作成を行うこととした.このプログラムは主に次の2点からなっている:(1)均一な蛍光板上で蛍光強度を測定し,その際観測された蛍光の不均一が励起光強度の関数であると見なして補正を行う,(2)樹脂の選択や固化条件の調整によっても取り除けない蛍光(バックグラウンド)を,任意のスペクトルのピーク位置と任意の波数だけずらした位置で測定したバックグラウンド,それぞれの強度から補正する.このうち,(1)に関するプログラムはほぼ完成しており,(2)について研究を進めている.
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