研究概要 |
太陽系内に存在する惑星物質に含まれる元素の同位体組成を精密に測定することにより,その同位体体変動から原子核の性質を把握することができる。本研究では地球化学的観点に基づく同位体研究(天然の核反応に基づく元素の同位体組成変動)から素粒子の特性解明に結びつくことが期待できる研究課題として,(1)宇宙線と惑星物質の相互作用によって惑星物質表面で起きる核反応の一つである中性子捕獲反応の定量的評価,(2)オクロ天然原子炉内の核反応の同位体化学的特徴づけ,について実施・検討を行うことを計画している。 平成22年度は以下の通り実施した。 1.オクロ天然原子炉試料中に存在する金属微粒子(ε粒子)の同位体分析を行い,Ru,Rh,Pdなどの核分裂起源白金族元素が濃集していることを発見した.さらに^<99>Ruの同位体存在度の変動が他の元素同位体にくらべて顕著に大きいことから水の放射線分解によってもたらされたラジカル分子が局所的な酸化雰囲気をつくりだす可能性を見いだ。 2.巨大石質隕石として知られている吉林隕石から採取された9種のコア試料についてSm,Gd同位体分析を行い,宇宙線が石質標的に照射された場合の深さ方向に及ぼす影響を実験的に確かめ,理論値との比較を行った。 3.昨年度に引き続き,西南グリーンランドItsaq片麻岩複合岩体から採取されたジルコンのU-Pb年代分析を行った。
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