イオン液体は様々な特異的な性質を示す。特に熱物性はユニークである。イオン液体を構成する代表的カチオンであるC_n-methyl-imidazolium (C_Nmim)に加え、本年度はimidazolium環2位の位置の炭素についている水素をメチル基に変えた試料(C_nC_1mimカチオンを含むイオン液体)に発展させた。この位置の水素はプロトン性が強く、これをメチル基に変えることにより、大きな物性変化が生じる。相転移に焦点をあて、超高感度熱分析とラマン散乱等を併用し、熱物性と構造を関連づけながら、C_nmimおよびC_nC_1mimカチオンで比較した。置換したメチル基が他のアルキル基(主にブチル基)の運動を制限する以上に対アニオンの位置を制限することによって、熱物性の違いが生じることが明らかになった。 上記の熱現象をダイナミクスの立場から、NMRの縦緩和および横緩和時間(T_1、T_2)で検討した。低周波数NMRを用いて、^1HからC_nmimカチオンおよびC_nC_1mimカチオン全体のダイナミクスを、高分解能NMRを用いて^<13>Cから各炭素のダイナミクスを検討した。結晶化やガラス転移以外に、各原子の運動が凍結する状態を見つけた。炭素の運動性の観点から、タイプの異なるグループの運動性が、複雑な熱挙動を示す一つの原因であることを明らかにした。 また、イオン液体中または低分子量の液体Poiyethylene Glycol (PEG)中にスパッタリング法で金属ナノ粒子を合成する新規方法の研究を進めている。ナノ粒子の生成機構やサイズ決定に、温度(すなわち捕獲媒体のミクロな熱運動)が大きな要因であることを明らかにした。熱の観点から金属ナノ粒子生成機構の解明とサイズ制御の確立するための研究を進めている。
|