酸化チタンに光が照射されると電子-正孔対がクーロン相互作用したエキシトンが生成し、このエキシトン状態の表面電子・正孔分布や寿命が光誘起過程を理解するための鍵になると考えられる。エキシトン状態は密度汎関数法といった一体近似の電子状態理論では記述できず、電子-正孔間の二体相互作用を考慮した多体摂動論による取り扱いではじめて記述できる。アナターゼ型酸化チタンのナノ粒子には(001)面と(101)面があらわれる。(101)面が主な光触媒活性面と言われているが、最近(001)面も活性で、また表面再構成の可能性にも興味が持たれている。そこで本研究では、アナターゼ型TiO2(001)表面の密度汎関数法(DFT)および多体摂動論Bethe-Salpeter方程式(BSE)による第一原理計算により、表面エキシトンと、その電子分布を理論的に検討した。表面構造最適化のための密度汎関数計算は平面波基底で擬ポテンシャルを用いたGGA/PBEレベルで行った。表面は8層スラブでモデル化し、(001)表面ユニットセルは1x1、またLazzeriとSelloniらの計算によって提案された、"ad-molecule"モデル(ADM)による再構成面ユニットセルは1x4とした。LDA近似でグリーン関数G、RPA近似でスクリーンポテンシャルWを求め、DFTバンド構造に対する自己エネルギー補正をGW法で評価した。最後に電子-正孔2体グリーン関数についてのBethe-Salpeter方程式(BSE)を解いてエキシトン状態を求めた。1x1(001)3.1eVエキシトンの場合、電子は正孔のある酸素原子から離れたTi原子に局在している様子が見られた。この電子分布の局在性は光触媒作用としての酸化還元反応に有利であると予測される。一方1x4(001)3.6eVエキシトンの場合、電子は完全に非局在し、光触媒反応に有効ではないと予測される。
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