研究課題/領域番号 |
21245004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 晃一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40175659)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / エキシトン・ダイナミクス / 電子移動ダイナミクス / 励起エネルギー移動 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、電子供与分子/電子受容分子の異種界面でのエキシトン・ダイナミクスと励起エネルギー移動に関して研究を行った。特に有機薄膜太陽電池界面における電荷対生成の高効率化を目指し、電荷対生成過程の初期過程であるドナー分子からアクセプター分子への電荷移動反応が高効率におきる励起状態や界面配向を探索することを目的とした。種々の有機薄膜太陽電池の異種有機分子界面について電子状態計算、マーカス理論、量子マスター方程式法を用いてドナー励起状態から電荷移動状態への電子移動ダイナミクスを解析し最適なドナー分子の理論的設計を進めた。有機薄膜太陽電池については、PCBM/P3HT系において側鎖長やPCBMの分散濃度を変更した際に電荷移動状態が如何に変化するか解析し界面における分子配向の同定と効率に与える影響を考察した。その結果、PCBM/P3HT系の相界面における有機分子の配向が明らかになり、また、電荷移動状態のPCBMの分散濃度依存性も明らかになった。特に、エネルギー変換効率が低い要因となる電荷再結合速度のPCBMの分散濃度依存性が明らかになり、アクセプターであるPCBMの凝集度により複数のPCBMにわたるLUMOの非局在化を調整することで電荷移動状態を変化させることが、高効率化への指針になると考えられる。さらに複数のDiketopyrrolopyrrole (DPP)誘導体ドナーについての電子双極子解析から,ドナーからアクセプターへの電荷移動型励起状態が存在すると、この励起状態が界面における光吸収による励起子生成と直接的な電荷移動を可能にし、ドナー凝縮層で生成した励起子が界面で解離する中間状態としても機能するため、短絡電流密度が大きくなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、表面・界面における熱反応あるいは光化学反応の物理化学的過程を統合的にシミュレーションすることを最終目的として捉え、その基礎となる表面・界面における(1) 局所励起ダイナミクス、(2) 反応量子ダイナミクス、(3) 緩和過程ダイナミクス、に対する新たな化学反応理論とシミュレーション体系の構築を目的とした。これまでに具体的に有機系太陽電池を取り上げ、電子供与分子/電子受容分子の異種界面でのエキシトン・ダイナミクスと励起エネルギー移動の観点からとらえ、太陽光エネルギー変換過程の化学反応理論とシミュレーション法を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
分子が吸着した固体表面がつくる界面に光を照射する、あるいは電子を注入することによる非断熱過程により、ナノ界面域での新規な動的機能発現が期待される。今後はナノ界面域での非断熱過程による動的機能発現のメカニズムの解明と、それら非断熱過程の量子制御について理論的研究を発展させる予定である。
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