研究課題/領域番号 |
21245011
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 佳久 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30112543)
|
研究分担者 |
森 直 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70311769)
楊 成 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70456995)
福原 学 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (30505996)
西嶋 政樹 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (70448017)
|
キーワード | 光化学 / 超分子化学 / 不斉合成 |
研究概要 |
光による不斉合成は本研究者らが先導する新しい研究分野の一つであるが、本研究では複合キラル超分子を用いる光不斉創成について研究を行い、今年度は次に述べる重要かつ有望な成果を得た。 (1)アビジン・ビオチン錯体を凌駕する最強の人工超分子系を新たに見いだすとともに、計算化学によりその原因を究明し、下記項目(3)の成果を得ることを可能にした。 (2)キラルなパラシクロファンを用いる1,5-シクロオクタジエンの光増感不斉異性化反応で従来の光学収率を大きく上回る87%の光学収率を得たことにより、水素結合などの強い分子間相互作用のないゲスト分子の不斉光化学反応に適用可能な有効な戦略を見いだした。 (3)α-シクロデキストリンをキラル足場とし、γ-シクロデキストリンあるいはキューカービチュリルを束縛ホストとする複合超分子系を構築することにより、究極的とも言える化学収率98%、光学収率99%を同時に達成し、複合キラル超分子の有効性を立証するとともに、今後の幅広い展開が可能になった。 (4)光化学の特徴を活かした励起波長による新たな立体化学制御の可能性見いだした。 (5)超分子光化学に関する最新の成果をまとめた編著書「Supramolecular Photochemistry」(マイアミ大学V.Ramamurthy教授と共編・共著)を米国のWiley社から2011年8月に出版した。 なお、本研究代表者はこの分野に関する貢献が認められ、2011年6月にベルリン(シャルロッテンブルク宮殿)においてフンボルト賞(Humboldt Research Award)を授与された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ジアステレオ区別反応系で、当初に掲げた大きな達成目標の1つであった95%以上の光学収率をこの時点で達成できたこと、さらにより困難なエナンチオ区別系でも87%という飛躍的な向上を果たしたうえ、光反応の特性を活かした励起波長による立体化学制御法を見いだしたことは、複合超分子系を用いた光不斉創成の有効性、優位性を示すものであり、今後のさらなる展開への大きな足がかりを得たと考えられるため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で高い光学収率を得たことで、本研究課題で掲げた「複合キラル超分子」の有効性が実験的に証明できたので、今後は新たな反応系とより幅広い系へ展開する。 展開方向としては4つ考えている。(1)温度、圧力、媒体、励起波長など外部環境因子による多次元制御を複合超分子系と組み合わせることにより精緻で高度な制御を達成すること、(2)より困難な交差光二量化系やより柔軟で立体制御が困難な系、(3)より単純なキラル超分子系による高い光学収率の達成、(4)生体系ホストの抗体触媒的手法による創成とキラル光化学への展開である。これにより、高度化と一般化ならびに実用化に向かって研究を推進できるものと考えている。
|