研究課題
高原子価ヒドリド錯体を用いた分子変換反応場の構築を目的に、多座アリールオキシド配位子をもつ前周期遷移金属のヒドリド錯体の合成を行った。昨年度は、3つのフェノキシド配位子をメチン炭素1つで3脚型に連結した3座配位子[OOO]^<3->かをもつヒドリド錯体[K(DME)]_2[{(OOO)Ta}_2(H)_4](1)の合成を行った。錯体1は2つのTa(IV)金属が4つのヒドリド配位子により架橋された2核錯体である。本年度は、錯体1と一酸化炭素の反応を検討したので、その結果を以下に記す。錯体1のニオブ類似体は、窒素分子との反応では6電子還元剤として作用し、N-N3重結合を切断することでニトリド錯体を与える。一方、錯体1は窒素分子に対して不活性である。しかし、一酸化炭素COとは低温、常圧で円滑に反応が進行し、[K(DME)]_2[{(OOO)Ta}_2(H)(O)(OCCH)](2)を与える。化学量論から、反応には2倍等量のCOが関与しており、錯体1からは1倍等量のH_2が脱離している。反応過程で、CO分子のTa-H結合への挿入、C-O結合切断、C-C結合形成反応が連続的に進行している。錯体2は2核錯体であり、2つのタンタル金属間をヒドリド配位子とオキソ配位子が架橋している。さらにイノラート配位子OCCHが2つの金属を結びつけている。錯体2にはヒドリド配位子が1つ残っているが、熱的に安定であり、過剰のCOとも反応しないことが観測された。X線構造解析およびNMRスペクトルにより、錯体2の構造を決定した。例えば、^1HNMRにおいてヒドリド配位子およびイノラート配位子OCCHは10.3ppmおよび9.06ppmにそれぞれ観測された。この反応は、COをイノラートへと変換した興味深い例である。今後、^<13>COを用いた同位体実験等を行うことで、反応機構を明らかにする。
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