研究概要 |
既に我々は、フェニルピリジン誘導体を基質として用い、二酸化炭素雰囲気下、ロジウム触媒及びメチルアルミニウム反応剤を作用させることにより、o位炭素-水素結合の直接カルボキシル化が進行することを見出している。今回我々はまず本反応の反応機構について詳細な検討を行い、各種中間体の1H NMRによる観測、ならびに単離、単結晶X線構造解析によるその同定に成功した。特に本反応系中においてロジウム錯体は、二分子の基質が配位した構造を取っていることが明らかとなった。また配向性官能基を持たない単純芳香族炭化水素の炭素-水素結合の直接カルボキシル化の検討を行い、TONは低いものの、触媒的に反応が進行する可能性を見出した。さらにアルケンのsp2炭素-水素結合の直接カルボキシル化の実現を目指し、まずは配向性官能基を有する基質としてシクロヘキセニルピリジン誘導体を用いフェニルピリジン誘導体を用いた際の最適条件を適用したところ、目的のカルボキシル化体が中程度の収率で得られ、同時にメチル化体も相当量副生することがわかった。これらの反応に関しては、収率の向上を目指した検討を継続している。 Pincer型パラジウム錯体を用いる不斉ヒドロカルボキシル化反応の実現をめざし、種々のキラルなPSiP-ピンサー型パラジウム錯体の設計・合成を行った。リン原子上をキラルとした配位子や、ケイ素原子上をキラルとした配位子を様々合成し、光学分割を行い各種のキラルなピンサー型パラジウム錯体を合成することに成功した。これを用いて1気圧の二酸化炭素雰囲気下、1,2-あるいは1,3-ジエンを基質とするヒドロカルボキシル化反応についてさまざまな検討を行った結果、β,γ-不飽和エステルが40%ee近い光学収率で得られることを見出した。
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