研究課題/領域番号 |
21245027
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真島 和志 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70159143)
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キーワード | クラスター触媒 / ナノ構造触媒 / 官能基変換反応 / 末端官能基化 / メタラサイクル錯体 / 炭素-水素結合活性化 |
研究概要 |
クラスター錯体が単核錯体にはない特異な反応性を示すことを見出してきたことから、その真の活性種の解明とさらなる触媒活性の向上に向けて研究を進めた。とくに、亜鉛クラスター触媒を用いたエステル交換反応に対しては、添加剤としてアミンや含窒素複素環化合物を用いることで、その触媒活性が劇的に向上することを見出し、反応の速度論的解析の結果からクラスター錯体がその構造を保ったまま触媒反応を起こしているのではなく、添加剤が配位することによって構造変化を起こし、その後生成する活性種が反応を起こしていることを明らかにした。これらの知見はクラスター触媒の設計に対して非常に重要であり、適度に構造変化を柔軟に起こす構造モチーフをとりいれることが、錯体触媒の合成と高活性の発現には重要であることが分かった。 また、本申請者は前年度に炭素-水素結合活性化として前周期遷移金属アルキル錯体によるσ結合メタセシス反応に着目し、得られるメタラサイクル錯体を利用したカップリング反応への展開に関して研究を進めてきた。本年度は前周期遷移金属錯体による炭素-水素結合活性化のポリマー合成への新たな利用法を見出し、原料であるアルキルイットリウム錯体に対して有機基質、モノマーと順次添加することでも極めて効率よくポリマー末端に新たな官能基を導入可能であることを明らかにした。高分子合成の分野においては、ポリマーに新たな特性を付与する方法として主鎖構造と異なる官能基を組み込む研究がなされており、本知見はこれまでにない機能性高分子の新しい合成法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラスター触媒を用いたエステル類の官能基変換反応を開発するにあたり、エステルー交換反応に対してアミンや含窒素複素環化合物が非常に良い添加物となり、触媒活性や官能基許容性を著しく向上させることが分かった。また、添加剤を用いた触媒系での活性種構造の解明に向けた研究の結果、用いているクラスター触媒が添加物存在下で構造変化を起こし、より高活性な化学種を生成していることが分かった。 さらに、新たに3族金属錯体を用いた炭素-水素結合活性化反応に関する研究を進め、錯体上でのC-H結合活性化のみならず、生成するメタラサイクルに対してオレフィンが挿入反応を起こして、ポリマー鎖が生成することを明らかにした。これは末端官能基化ポリマーを単段階で合成する上で非常に有用な反応である。
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今後の研究の推進方策 |
クラスター触媒の研究では、クラスター錯体と添加剤の反応により生成する化学種の単離を目的として研究を進める。最近我々は亜鉛錯体のほかに、コバルト錯体においても特異な反応性を示すことを見出しており、紫外可視分光法や核磁気共鳴を用いた真の触媒活性種に関する研究を引き続き進める。 また、最近見出した炭素-水素結合活性化については、様々な配向基を有する基質を用いて2-4族アルキル錯体上での反応性を明らかにする。とくに炭素-炭素多重結合を配向基とした有機分子の炭素-水素結合活性化反応が進行することを見出していることから、貴金属触媒において用いられることのなかった基質の適用による前周期遷移金属錯体ならではの反応開発を目指す。
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