研究課題
環状ニッケル錯体を鍵中間体とする触媒反応の開発を行った。従来のヒドロアシル化反応では、アシルメタル中間体を経由するために脱一酸化炭素が副反応として進行する。そのために触媒の失活や目的とするケトンが得られないなどの問題が避けられなかった。本研究課題において開発したアルケンの分子内ヒドロアシル化反応においては、アシルメタル中間体を経由しないために、脱一酸化炭素が起こらない。そのために、いずれの反応においても高収率で目的とする環状ケトンが高収率で得られた。また、6員環ケトンであるテトラロン誘導体も非常に高い収率で得られた。6員環ケトン類は従来の遷移金属触媒を用いての反応では、非常に容易に脱一酸化炭素が進行するために合成が困難であるとされてきた。環状ニッケル錯体を中間体とする本反応ではこれが可能になった。さらに、本反応においても反応中間体の解明を行うために量論反応を検討した。この際には、ニッケル反応中間体の二量化錯体が単離された。この錯体そのものは、触媒サイクルの外側に存在していると考えられるが、実際の反応中間体の構造を反映していいるものと考えている。また、アルキンとイミンとの反応においてはNHC配位子をもちいることで、これまでは不可能であったアルキンとイミンとの組み合わせにおいても対応するジヒドロピリジンが生成物として得られることをみいだした。2007年に発表した窒素上にSO2Phが置換している反応とは異なり、反応の律速段階は二分子目のアルキンが挿入する段階である事が量論反応により明らかとなった。このように、基質の違いにより反応の律速段階が変わる可能性は以前より知られていたが、実際に錯体反応により明らかにした例は殆どなく珍しい例であると考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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