研究概要 |
本課題では、多環式芳香族などのπ系分子(機能団)と種々のアミン化合物(構造制御部位)からなる超分子複合体を基盤とし、ユビキタス元素だけを用いた高効率、高輝度で安定な超分子発光素子を創出することを目的として研究を行った。 アントラセン-2,6-ジスルホン酸の脂肪族アミン塩結晶中での蛍光挙動を、アミンの脂肪鎖の大きさ・形状に応じた構造の固さおよびCH-O相互作用により制御できることを見出した。これにより、20倍以上の発光増強が達成できた。また、アントラセン-1,5-ジスルホン酸の脂肪族アミン塩が、結晶中における多様なπスタック集合体を構築し、アントラセンのend-to-face型の配列は励起二量体形成による緑色発光を与え、face-to-face型のレンガ壁様配列になると多分子間で励起会合体を形成することによって黄色まで発光色調を変化させた。さらに、アントラセン-1,8-ジスルホン酸の脂肪族アミン塩を用いて、πスタック方向に加えて並進方向の配列制御に成功した。アントラセンがほぼ平行にend-to-endの配列で並んだ時、特異的な光電子物性を示すことを発見した。これにより、青から赤燈色までのほぼフルカラーな発光変調と200倍以上の発光増強、そして異方的かつ大きな電荷移動特性の発現が可能となり、有機光電子材料の設計・開発における重要な指針が得られた。一方、嵩高いトリフェニルメチルアミンを用いたアントラセン有機塩は電荷補助型の水素結合によりナノクラスターを形成し、クラスター同士がアントラセン間のπ-π相互作用により連結されたビーズ状集合体を強固に構築した。このπスタック型ビーズ状集合体は結晶中で極性分子から非極性分子まで多種多様な有機分子を包接し、包接分子に応じて青色から橙黄色まで幅広く発光色調を変化させた。これらの結果は包接超分子あるいはセンシング材料の創出の新しいアプローチを示唆している。
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