研究課題/領域番号 |
21245040
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉本 直己 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60206430)
|
研究分担者 |
川上 純司 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (40289012)
中野 修一 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (70340908)
三好 大輔 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (50388758)
|
キーワード | 核酸 / 分子クラウディング / ポリエチレングリコール / ヒストンペプチド / 四重らせん構造 / PCR / バイオセンサー / 相互作用エネルギー |
研究概要 |
分子環境効果を利用した機能性核酸を開発するために、細胞内分子環境を模倣したモデル実験系を用いて、DNAあるいはRNAが形成するヘアピン構造と四重鎖構造、さらにモデルペプチドとの相互作用を検討した。高効率なPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のために、適量の中性ポリマー分子(ポリエチレングリコールなど)による分子クラウディング効果を検討したところ、プライマーDNAによる自己構造体(ヘアピン構造)の形成が抑制され、分子環境を変えるだけでPCR効率を向上できる可能性が示された。また、DNAとRNAが形成するヘアピン構造に対しては分子クラウディング環境が与える影響はほぼ同じであったが、四重らせん構造は分子環境によってDNA鎖相互作用の方向性が変化した一方で、RNAの四重らせん構造は分子クラウディング環境でも平行型四重らせん構造が維持されることが見出された。この結果は、細胞内で機能する、四重らせん構造を基盤とした機能性核酸分子の開発に役立つ知見であると考えられる。 細胞核内に特有の分子環境効果を明らかにするために、ヒストンペプチドがDNA高次構造に及ぼす効果についても検討した。その結果、ペプチドはDNAの非標準的な高次構造に強固に結合し、DNA構造を安定化させることが示された。さらに、分子環境の違いによるタンパク質-RNA相互作用への影響を調べるために、同一のモデル化合物を用いて、バイオセンサー表面,希薄溶液、細胞内のそれぞれで相互作用エネルギーを比較したところ、天然型のタンパク質および変異型モデルペプチドのいずれも、算出される結合定数は測定系によって異なっていた。ところが、結合エネルギーの差を比較したところ、天然型と変異型の結合エネルギーの差は、全ての測定系においてほぼ一致した。このことから、異なる測定系で得られるデータの違いは分子環境の違いによってもたらされることが明らかになった。
|