研究課題
緑膿菌Pseudomonas aeruginosaの一酸化窒素還元酵素cNORの結晶構造解析に成功した。cNORは、微生物の嫌気呼吸のキー酵素であり、一酸化窒素NOを還元して亜酸化窒素N_2Oに変換する(2NO+2H^++2e-→N_2O+H_2O)。反応物NOが大気汚染気体NO_xの一種であり非常に細胞毒性が強いこと、生成物N_2Oが二酸化炭素CO_2の約310倍の温室効果があり、なおかつオゾン層を破壊する気体であることから、環境科学の側面からも注目されている酵素である。さらに、cNORは好気呼吸の鍵酵素であるチトクロム酸化酵素と、共通の祖先を有していると考えられており、呼吸酵素の分子進化を考える上でも重要な酵素である。本酵素は、膜結合性酵素であり、結晶化を開始してから7年後の成果である。全体構造は、12本の膜貫通αヘリックスからなるNorBサブユニットと、親水性のチトクロムcフォール度と1本の膜貫通αヘリックスからなるNorCサブユニットで構成されていた。触媒反応中心は、ヘムbと非ヘム鉄の2つと鉄からなる複核中心であり、非ヘム鉄には、3つのHisイミダゾールと1つのGluカルボン酸が配位子として配位していた。また、酵素反応に使われるプロトンおよび電子の輸送経路に関して議論した。以上の分子構造の情報が得られたことにより、酵素反応機構の議論を開始することができた。チトクロム酸化酵素と構造を比較することにより、「呼吸酵素が進化の過程においていかにプロトンポンプ機能を獲得したか」に関しても議論を開始する事ができるようになった。
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