研究課題/領域番号 |
21245042
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石井 久夫 千葉大学, 先進科学センター, 教授 (60232237)
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研究分担者 |
野口 裕 千葉大学, 先進科学センター, 助教 (20399538)
中山 泰生 千葉大学, 先進科学センター, 特任講師 (30451751)
宮前 孝行 産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (80358134)
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キーワード | 有機半導体 / 接触帯電 / 光電子収量分光 / 紫外光電子分光 / ギャプ内準位 / PET / 界面電子構造 / 高分子 |
研究概要 |
有機半導体材料のHOMOやLUMOなどのフロンティア軌道の電子構造に加えて,HOMO-LUMOギャップ内にあると考えられる不純物準位や欠陥準位などのギャップ内準位の電子構造は,現実のデバイス特性を理解する上で不可欠である.電気物性を左右するこれらの電子準位の状態密度(以下"フロンティア状態密度"と呼ぶこととする)を直接測定する実験手法を整備し,電子構造測定と同時に電気物性の"その場測定"を行い,観測されたフロンティア状態密度に基づいて,素子の電気物性を解明することを目的として研究を進めている。 本年度は、主に以下のような成果を得た。 (1)装置の整備を引き続き行い、電子増倍管を用いて光電子収量分光(PYS)測定の高感度測定ならびに低迷光低エネルギー光を用いた紫外光電子分光(UPS)測定が行えるように整備した。前者では、バックグラウンドのシグナルを抑制するための電子レンズ系を整備した。後者においては、HOMO領域のスペクトルを4桁以上のダイナミックレンジで測定することを実現し、いくつかの有機/有機界面におけるギャプ内準位の観測に成功した。 (2)「Alq3薄膜の配向分極効果による電子構造と電気物性の変化」については、Alq3の配向分極効果が他の物質でも生じること、成膜中に光照射することで素子特性が変化することなどを見いだした。 (3)有機・電極界面の電子構造と素子の電気特性をin-Situで比較するために、UPSにより界面電子構造を評価した薄膜に、イオン液体のゲルを押しつけて素子化し、その場で変位電流測定を行うシステムを構築した。これにより、電子構造と電気特性の直接比較を可能とした。 (4)帯電性高分子であるポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜のPYS測定ならびにケルビン法測定を行い、バンドギャプ内準位がフェルミ準位近傍まで広がっていることを見いだした。また、実際にPET薄膜を摩擦帯電させるとPYSスペクトルがシフトすることを見いだした。今後、種々の帯電列の高分子を測定して、帯電機構の解明をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるにあたって不可欠な、高感度PYSならびに低迷光UPS測定装置、ならびに、電子構造と電気特性を同時に評価するシステムを構築でき、実際にギャプ準位の観測例が蓄積されてきており、順調に進んでいる。但し、光キャリアPYS法に関しては、イオン生成法に関する手法開発が予定より遅れているため、総合的には(2)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ギャプ内準位と電気特性との相関を調べることに関しては、装置上の問題がすべて解決したので、種々の系の測定を進めることで、総合的な知見を構築する予定である。光キャリアPYS法に関しては、引き続き負のキャリアを供給してPYS測定を行う方法を検討する。もし、想定した手法でうまくいかない場合は、ドナーをドープすることで、電荷移動をおこさせて負イオンを生成し、そのPYS測定を行うことで近似的なデータの取得を目指す予定である。
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