研究概要 |
有機半導体材料のHOMOやLUMOなどのフロンティア軌道の電子構造に加えてHOMO-LUMOギャップ内にあると考えられる不純物準位や欠陥準位などのギャップ内準位の電子構造は現実のデバイス特性を理解する上で不可欠である.電気物性を左右するこれらの電子準位の状態密度(フロンティア状態密度)を直接測定する実験手法を整備し,電子構造測定と同時に電気特性の"その場測定"を行い,観測されたフロンティア状態密度に基づいて,素子の電気物性を解明することを本研究の目的としている. 本年度は、昨年度整備した装置を用いて、低エネルギー低迷光紫外光電子分光(LELS-UPS)と高感度光電子収量分光(HS-PYS)測定により種々の有機半導体バルク・界面の電子構造評価を行った。真空内電気測定系も整備したが,分光測定において興味深い結果が得られたのでそちらを優先したため、電気測定のその場観察測定は予定より遅れ,現在実験を進めている.今年度の主な成果は以下のとおり. (1) 有機太陽電池のモデル界面であるルブレン/C60系において,埋もれた界面の測定に成功し,C60の蒸着にともない有機・有機界面のモルフォロジーが変化することを見いだした.これは新しいバルクへテロ接合作成法の可能性を示唆するものである. (2) ペンタセン,ルブレンなどの有機半導体や,PETやナイロンなど摩擦帯電に関連した高分子絶縁体などのギャプ内準位の測定を行い,HS-PYSにおいて最大で7桁の強度レンジの測定に成功し,得られた電子構造と電気特性の相関を解明した. (3) 正孔輸送材料/ITO界面のフロンティア状態密度を実測し,注入特性と密接な関連があることを示した.現在,注入メカニズムの再構築を検討している.
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