研究概要 |
本研究では,情報分野や生医学分野などの工業分野において求められている高分子微粒子材料の高機能化,特に異形高分子微粒子の精密合成法の確立を目指している。本期間中,シード分散重合法を用いて光散乱性やレオロジー特性などの点において,真球状粒子とは異なる形状由来の物性を発現することが期待されるゴルフボール状異形粒子,中空粒子の合成に成功した。また,制御/リビングラジカル重合(CLRP)の一つであるATRPを用いたシード重合法を駆使することにより左右の半球部で性格の異なるヤヌス粒子さらに刺激応答性マッシュルーム状異形粒子の合成を報告してきた。 本年度は新規な異形粒子合成の可能性を明らかにした水分散系でのCLRPについての基礎的検討をさらに進めると共に研究成果を取りまとめるために,熱力学的および速度論的観点からモルフォロジィの妥当性を明らかすることを目指した。その際,共焦点レーザー顕微鏡を導入し,得られたヤヌス状ポリスチレン(PS)/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)複合粒子の内部構造を明らかにしており,相分離したPMMA相外部表面からのみポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルが生長していることを明らかにした。また,その相分離体積を変化させることにより粒子形状の制御も可能であった。さらに,この過程において,特定の溶媒によりヤヌス状粒子が半球に分割されるという非常に興味深い現象を見出し,新たな異形高分子微粒子作製法の提起と生成機構を明らかにした。 以上の結果は,既に16報の学術論文に掲載されており,24件の口頭発表(内8件は国際学会)を行っている。さらに上記研究において2件の招待講演を受けるなど,多大な成果を挙げることができた。
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