研究課題
電波と光波の両方の性質を兼ね備え持つ、未開拓の光、テラヘルツ(THz)光は、近年、特定試薬・化学物質・構造等を非破壊かつ安全に検出するテラヘルツ分光イメージングの光源として注目され幅広い分野での利用が急速に進みつつある。テラヘルツ帯量子カスケードレーザは、小型、高効率、高出力、長寿命、狭線幅テラヘルツレーザ光源として大変に期待されている。しかし、量子カスケードレーザでは電子-LOフォノン散乱による非発光再結合確率が大きいため5-12THz帯のレーザ発振がこれまで得られなかった。一方、窒化物半導体では散乱波長帯はより高エネルギー側にあるため、これまで不可能であった5-12THz帯のレーザ発振が可能になると考えられる。本研究では、窒化物半導体を用いた量子カスケードレーザ実現のための技術開拓を新たに行い、それを実現することにより、これまで不可能であった5-12THz帯を含むTHzレーザ発振を実現することを目的とする。今年度は、昨年度までに得られたGaN/A/GaN系THz量子カスケードレーザ構造からの電流注入バンド内自然放出発光について、量子カスケード発光層からの発光であることを確証するための研究を行った。観測されたTHz発光は、電極付近などからの発光である可能性があるため、量子構造からの発光であることを示す必要がある。まず、素子が破損した後では電流が流れていても発光が起こらないことから電極付近からの発光ではないことを明らかにした。また逆バイアス印加では発光が観測されなかったことから、量子構造からの発光であることが有力である。これらに加え、発光の偏波面依存性を観測し、TM偏光のみ観測された。また、THz発光周波数の印加バイアス電圧依存性はシミュレーション解析値とよい一致が得られた。これらのことから、得られたTHz発光は量子カスケードレーザの量子構造(発光層)から放射された自然放出光であることの確証を得た。本研究では引き続き、THz自然放出発光の高強度化とレーザ発振の実現を目指して研究を行っている。
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The Review of Laser Engineering
巻: Vol.39, No.10 ページ: 769-774
Appl.Phys.Express
巻: Vol.5 ページ: 012101