研究課題/領域番号 |
21246007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋詰 保 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (80149898)
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研究分担者 |
佐藤 威友 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (50343009)
赤澤 正道 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (30212400)
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キーワード | AlGaN / GaN / ドライエッチング / ALD / 界面準位 / 窒素空孔 / AlInN / 多重台形チャネル |
研究概要 |
窒化物半導体ヘテロ界面を利用した高電子移動度トランジスタ(HEMT)の劣化特性と表面・バルク電子準位との相関、表面・バルク電子準位の特性解明、電子準位制御構造の開発、新しく提案する多重台形チャネル構造の適用と評価を通して、真にロバストな窒化物半導体トランジスタ構造技術の構築を目的として研究を展開した。本年度の主な成果を以下にまとめる。 1)ドライエッチングしたn-GaN表面に原子層堆積法によりAl_<2O_<3>膜を形成し、容量-電圧(C-V)法、透過電子顕微鏡観察および光電子分光法によりAl_<2O_<3>/GaN界面の特性を評価した。ドライエッチングによりGaN表面で窒素空乏が生じ、また、原子層オーダーの段差ラフネスが導入され、これらが、Al_<2O_<3>/GaN界面に窒素空孔に関連した離散準位の発生と連続準位の密度増加を引き起こすことが明らかになった。GaN表面への窒素ラジカル処理およびAl_<2O_<3>/GaN構造の熱処理が、界面準位密度の低減に効果的であることがわかった。 2)AlInN/GaNヘテロ構造に関して、界面に導入するスペーサ層の影響について、C-V法により評価した。2次元電子層の移動度向上と表面モフォロジー改善にはAlGaNスペーサ層が効果的であるが、順バイアス時にAlInN/AlGaN界面に電子蓄積が生じることが明らかになり、トランジスタ動作ではパラレル伝導の要因となる。しかし、AlGaNのAl組成制御により電子蓄積の制御が可能であることがわかった。 3)多重台形型AlGaN/GaN HEMTにオフストレスを加え、電流低下(コラプス)現象を通常のプレーナHEMTと比較した。プレーナ構造HEMTより格段に低い電流コラプスが確認された。オフストレス時にアクセス領域の抵抗が増加するが、多重台形チャネルの高インピーダンス特性がアクセス抵抗増加の影響を低下させていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究の目的」には、4項目の目標を記載した。その中で、AlGaNおよびInAlNの表面・バルク電子準位検出と特性解明、HEMT劣化特性と表面・バルク電子準位との相関、および、多重台形チャネル構造によるHEMTの高信頼化に関しては、計画通り、またはそれ以上の成果が達成されている。また、電子準位制御構造の確立についても基盤的知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究期間の最終年度となるため、AlGaN/GaN HEMTの高信頼化に直結する研究項目を重点的に実施する。具体的には、これまでに明らかにされた絶縁膜界面特性に従って、原子層堆積法によるAl203膜の形成と、窒素ラジカル処理+ポスト熱処理プロセスを組み合わせ、界面準位密度の制御された絶縁ゲート構造を確立する。また、多重台形チャネル構造の最適設計を行い、絶縁ゲート構造と組み合わせて電流変動制御に結びつける。
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