研究課題
最終年度は、(1)界面ダイポール量の根源を明らかにするために絶縁膜とSi基板の界面に酸素を供給する研究、(2)Siの原子濃度を変化させた希土類シリケートとSi基板の界面ダイポール量の変化を捉える研究、および(3)複数の価数を有する絶縁膜としてCe酸化物を選択し、価数変化が界面反応に及ぼす影響について検討を行った。(1)について、LaシリケートとSi基板の界面へ、希釈酸素雰囲気の低温熱処理で酸素を導入するプロセスを考案し、フラットバンド電圧の挙動を確認した結果、容量値に変化のない最適な条件で熱処理を行うとフラットバンド電圧を10の12乗台の固定電荷量に相当する0.5V分だけ正方向にシフトすることを確認し、界面ダイポールが形成される根源としてシリケート成長時に形成される固定電荷が大きな要因であることが明らかになった。また、(2)については、同一の酸化ランタン膜をSi基板に堆積し、上部に形成する金属電極の構造を変化することで等価的にシリケート反応に用いられる酸素量を制御し、希土類シリケート中のSi原子濃度を制御した。具体的には、金属の種類はWと、その上にTiNをコートした構造、更にその上にpoly-Siをコートした積層構造の三種類を選択することで、等価酸化膜膜厚はそれぞれ0.8nm、1.3nm,1.8nmとなる。MOSダイオードのフラットバンド電圧を測定した結果、大きな差は見られずダイポール量はSi濃度に依存しないことがわかった。一方、(3)については3価と4価の価数が同時に存在する酸化セリウム膜は、熱処理によって4価の成分が酸素を放出しやすく界面の固定電荷を補償するメカニズムを捉え、フラットバンド電圧に影響を与えることをX線光電子分光から明らかにした。以上から界面ダイポールはシリケート成長時に形成される固定電荷が支配的であることがわかった。
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