1. 多元素ナノ構造の原子レベル物性評価 ナノ構造が発現する機能は構造(原子の種類と配置)と電子状態が密接に絡み合った結果であり、これらの特性を原子レベルで同時に測定することが重要である。そこで、原子を識別しながら、構造と局所電子状態を同時に評価できる手法を確立した。具体的には、これまで、独立に開発してきたフォーススペクトロスコピーやフォースマッピング(結合力や原子識別)、ARWSTM同時測定(凹凸と電子状態)を統合し、フォースマッピングと電流マッピングの同時測定(AFMISTMマッピング)を行えるようなシステムを構築した。また、STM以外の電子状態を測定できる方法としてケルビンプローブ力顕微鏡の手法を確立した。 2. 原子操作による多元素ナノ構造の組立 多元素ナノ構造は周辺の原子種や個数によって構造が変化することが予想される。例えば、2次元のナノ構造の場合、格子不整合によって試料表面の周期構造が変化することがこれまでの申請者らの実験によってわかっている。クラスタやワイヤには安定原子数(マジックナンバー)が存在する。そこで、いくつかのモデルとなる材料系において、原子操作によって多元素ナノ構造を組み立てる条件を見いだす。さらに、原子操作によってナノ構造を作成しながら幾何学構造が原子レベルでどのように変化していくのかについての知見を得る。今年度は、室温で動作する現有の周波数変調方式原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて、Si (111)-(7x7)上でクラスタ作成を試みた。 3. 多元素ナノ構造の安定測定を行うためのFM-AFM開発 多元素ナノ構造の作成には、原子操作と画像観察を繰り返し行う必要があり、非常に時間がかかる。さらに、同じ領域(10nm^2)で長期間実験を行いたい。そこで、数日間極低温を保っことができるクライオスタットを新規に導入し、現有の極低温FM-AFMヘッドを開発した。
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