研究課題/領域番号 |
21246011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊藤 利道 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00183004)
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研究分担者 |
毎田 修 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40346177)
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キーワード | CVDダイヤモンド / マイクロ波プラズマCVD / 微斜面基板 / ホウ素ドープダイヤモンド / 放射線検出器 / パワーデバイス / 不純物バンド伝導 |
研究概要 |
本年度は、1.「室温で動作するCVDダイヤモンド光子・粒子検出器の作製」、2.「p型及びn型CVDダイヤモンドの高品質化作製プロセスの開発」及び3.「ダイヤモンド電子デバイス作製の基礎プロセスの開発」について研究を行った。1.については、(1)厚膜成長の際の基板端面効果について、十分な平坦性を担保することが高品質膜の成長には重要であり、<100>方向より<110>方向に微小角傾いた(001)微斜面基板の方が、デバイス応用には適していることが示された。(2)p型層を抵抗層とする位置検出可能なダイヤモンド検出器について、待機中の消費電力が少ない等、より適切な素子構造をデバイスシミュレーションにより見出した。(3)初期に試作した位置検出器の素子構造は、リーク電流が多い場合のみ有効であることが判明した。また、個人線量計についてはSiに比べ、ダイヤモンド線量計の放射線耐性が強いことが定量的に実証された。(4)櫛形電極型検出器における電子線注入の特性から増幅機能について検討した。2.については、(1)ホウ素アクセプターの低活性化エネルギー化の作製プロセスを検討し、積層しやすいプロセスを見出した。(2)積層型燐ドープや窒素ドープ試料におけるマイクロ波プラズマCVD法に適切なデルタドーピング法に対して、水素プラズマエッチング法を併用するCVDプロセスを開発した。また、(3)検出器やパワーエレクトロニクスデバイスにおいて、有効となる窒素ドープ量について定量的な検討を行った。3.については、(1)ホウ素ドープp型層とアンドープ層とを主体とするノーマリオフ型デバイス構造のパワーエレクトロニクス素子について、デバイスシミュレータによりその候補構造について更に検討を加えた。(2)高濃度ホウ素ドープ試料について、原料ガス中のホウ素濃度依存性や成長した膜の物性に関して新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイヤモンド電子デバイスの可能性は多岐に及んでおり、本研究では多くの分野での検討を行っている。各分野における進展状況は異なるが、総合的に見て、概ね順調に進展している、と判断している。位置検出器やパワーエレクトロニクスデバイスについては、シミュレーションベースではあるが、従来には報告されていない適切な素子構造を見出している。一方、高濃度ホウ素ドープダイヤモンドは、これまで余り検討されていなかった物性の理解を優先したため、その電気化学電極の特性への影響に関する調査は予想以上に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンド電子デバイスについては、最終年度に向け実際に試作する際により適切な作製プロセスの開発する必要が生じたが、既に予備調査を行った結果、妥当と思われるプロセスを見出しており、それを実施する段階に到達している。また、電気化学電極への応用については、これまで行われてこなかった高品質性を十分保持した状態で電極を試作する条件が概ね見出されたので、その条件を精査しつつ化学電極を試作し、基礎特性を評価する。
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