地下や海底の質量密度分布を飛翔体に搭載した重力計で計測する技術は、資源探査や地下断層の調査に用いられてきたが、本研究の目的はその計測の精度を1桁以上高め、重力の勾配として1μGal/m(1Gal=1cm/s2)の精度を達成できるプロトタイプ装置を試作してテストすることである。もし、この技術により計測精度が1桁以上改善されると、地下や海底の地中に眠る資源探査の能率が向上し、地下に潜む危険な活断層の探査にも有効な活用が期待できる。このためには、広範囲の重力の変化を能率良くかつ短時間で計るため、船、飛行機やヘリコプターなどの飛翔体を用いた探査に適したものが必要である。本年度は、そのプロトタイプ装置を試作して実験を行った。装置はいわゆるマイケルソン型レーザー干渉計の2つの反射鏡をコーナーキューブプリズムで置き換え、同一鉛直線上を自由に投げ上げ、落下できるようにしたものである。2つの反射鏡までの距離に差があるために安定化レーザー光源が必要である。当初の計画では単純な自由落下を想定していたが、研究遂行中に投げ上げ・落下の方法をとることのできるメカニズムを思い付き、急遽、この方法を取り入れる変更を行った(特許出願)。投げ上げ・落下方式では、真空度への要求が緩やかになることと上下運動の高さを小さくできるメリット、ならびに信号波形の周波数をせいぜい10kHz程度以下に抑えることができ、信号処理上の有利性が得られるなどの長所がある。投げ上げ・落下装置の試作品を真空中で動作させ、投げ上げられた物体の回転各速度が目標の20mrad/s以下とすることができ、また、投げ上げの速度を1Hzより十分速くできることが分かっている。重力勾配計本体の真空度は、目標の10^<-5>Paを達成しており、重力勾配の計測に必要な道具立てをそろえることができた。
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