地下や海底の質量密度分布を飛翔体に搭載した重力計で計測する技術は、資源探査や地下断層の調査に用いられてきたが、本研究の目的はその計測の精度を1桁以上高め、重力の勾配として1μGal/m(1Gal=1cm/s^2)の精度を達成できるプロトタイプ装置を試作してテストすることである。もし、この技術により計測精度が1桁以上改善されると、地下や海底の地中に眠る資源探査の能率が向上し、地下に潜む危険な活断層の探査にも有効な活用が期待できる。このためには、広範囲の重力の変化を能率良くかつ短時間で計るため、船、飛行機やヘリコプターなどの飛翔体を用いた探査に適したものが必要である。本年度は、昨年度試作した自由落下真空筒に投げ上げ・落下機構を装着し、コーナーキューブプリズムを保持した自由落下体を用いて、重力勾配を計測する実験を行った。自由落下体の上下運動の高さは最大で1cmに満たない大きさであり、光検出器からのデータ収集は60kHzのサンプリング率で行った。上下振動の機構の調整次第では目的の結果が得られない場合があるが、試行錯誤の調整の上目標に近いデータが取得できる条件を見出すことができた。上下の落下体の距離は約70cmであり、free air gradientと呼ばれる地球重力による重力勾配は、1cm当たり約3μGalであるので、測定値は210μGalに近い値を出すはずである。実験室に固定した状態での重力勾配を図る実験では、毎秒7.5Hzの繰り返し測定で毎回数μGalほどのばらつきがあって、2秒間の平均値は209μGalで測定値の統計誤差は1μGalを下まわる大きさである。この値のバラツキを小さくすることが次の課題であり、これまでのテストで得られた知見をもとにプロトタイプ装置の軽量化・省電力化を行って、飛行機などの運搬体に搭載できる重力勾配計へと進みたい。
|