研究課題
本研究では、次世代計算機環境における大規模シミュレーションを実現するために、並列化が困難な内部固有値問題の解法を対象として、高い並列性をもつ固有値解法の実用化技術を開発する。本年度は、前年度に開発した基本となるアルゴリズムの理論をさらに発展させるとともに、ソフトウェア実装のための基本技術の開発を引き続き行った。(1)固有空間のフィルターの概念に基づき、領域外にある固有値に対応した固有ベクトルが領域内の固有値計算にどのように影響を与えるかの解析を行い、ブロックHankelの場合に拡張した。この理論により、適切な部分空間サイズの選択が特異値分解を用いて可能となり、方法の適用性が向上した。(2)ブロックKrylov部分空間法のマルチコアにおける性能向上を行い、格子QCD行列の物理量計算に適用してその性能向上を確認した。開発している固有値解法では、ブロック型の線形方程式が現れるため、その高速化は方法の高性能化につながる。また、密度汎関数法で現れる行列では縮重があるため、この場合にもブロック型の解法が効果的である。(3)標準固有値問題で高性能を得るために、Krylov部分空間のシフト不変性を利用した解法の開発を行った。ここで開発した解法を原子核分野のシミュレーションで現れる問題に適用し、従来型の解法であるLanczos法と性能比較を行った。(4)非確定的手法による大域的な固有値分布推定法を開発した。大規模並列環境において高い性能を得るためには、適切な負荷分散やパラメータ設定が必要であるが、ここで開発した手法によって事前に対象とする問題の性質が解析できるため、これを用いたパラメータ設定によって高い並列効率と負荷分散が可能となる。これらの技術を用いて、ソフトウェア開発を進めた。
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