研究概要 |
本研究の目的は粒子を目標物に高速衝突させることにより堆積付着させる成膜法に関して,以下の点を明らかにした.これまでハイブリッド自動車用2次電池として通常使われている炭素膜負極を最終ターゲットとしていたが,昨年度の成果である複合粒子製造技術を応用し,シリコン膜負極を作成することとした.シリコン膜の場合,電池容量が3,4倍になると言われているが,シリコン膜の体積膨張により剥離する問題のため,実用化されなかった.本年度ではシリコン銅複合粒子を試作し,それを噴射衝突させることにより,箔に緻密シリコン膜を成膜することに成功した.さらにそれを用いて2次電池を試作し,その性能評価を行った. (1)噴流流動ダイナミクスシミュレーションと粉体破砕シミュレーション 昨年度に引き続き,ノズル出口,並びに基板衝突点近傍の圧力分布,粒子の速度分布をシミュレーションし,PJD噴射装置の最適設計,試作を行った.また粒子が銅箔基板に衝突した直後の粒子と基板の変形,破壊現象を,平滑粒子法を用いてシミュレーションした.従来の2次元から3次元モデルに変更し,実際に近い条件でシミュレーションできるようになった.その結果,PJDに最適な衝突速度範囲があることがわかった. (2)シリコン銅複合粉体の試作 本年度導入したミルにより原料粉を微粉化した後,1年目に導入した複合粒子製造装置を用いてシリコン銅複合粒子を作成した.処理条件と改質膜の厚さ,強度等に関して検討するとともに,改質膜の構造を多層構造にするなどの工夫を行った.SEM,TEMにより複合粒子を観察し,改質膜の生成状況に関して,詳細に観察した. (3)成膜実験 試作したPJD装置により,銅箔上へのシリコン銅複合粒子を成膜し,それを負極材を作製し,リチウムイオン電池を試作した.性能評価を行った結果,充放電の寿命が短い従来型電池と比較し,シリコン負極型ではより寿命が長くなることがわかった.
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