炭化ケイ素(SiC)は今最も注目を集めている半導体材料の一つである。SiC基板に作製したパワーデバイスは、現状のシリコンを基板としたものよりも内部損失を桁違いに低減可能であることから、限られたエネルギーを有効に活用することのできる省エネルギーパワーデバイスとして様々な応用が期待されている。しかしながら、SiCはダイアモンドに次ぐ硬度のため、従来の研削や研磨といった機械的加工方法では高能率な加工が困難であり、実用化の一つの障壁になっている。本研究課題では特にデバイス形成後に行われるSiCウエハの薄化とダイシングをターゲットとし、これらを、大気圧プラズマを用いた高能率プラズマエッチングであるPCVM (Plasma Chemical Vaporization Machining)に置き換え高能率・高品質な加工を実現することを目的としている。 今年度は、昨年度設計製作した基板温度制御PCVM装置の試料昇温部の立ち上げ調整を行い、ウエハレベルで400℃まで昇温可能であることを確認した。400℃まで昇温することにより、積極的な昇温を行わない時に比べ、加工速度が約10倍増加することが確認できた。また、2インチウエハの全面加工実験を行った結果、加工前には梨地だった表面が加工とともに光沢を有する表面に変化してゆくことが確認できた。 また、ダイシングに関する基礎検討として、従来のワイヤー電極周りに発生するプラズマを用いるのでは無く、プラズマ領域を物理的に制限するマスクを設けて発生させた細いプラズマを用いて加工を行うことを試みた。その結果、幅5mmの短冊形試料に対してではあるが、加工速度約10μm/min、加工溝幅約200μmという、ワイヤー電極では不可能であった加工特性を得ることに成功した。
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