研究課題
資源の枯渇の問題が深刻になり、現在、各種輸送機関のシステム駆動部(例えば鉄道、自動車の軸受けなど)の低摩擦化による省エネルギー化が注目されている。鉛が含まれた各種銅合金、アルミ合金は、その代表格であり、熱処理、ドーピングなどの材料の創製法を駆使して材料の低摩擦化が進められてきた。しかしながら、今後はエネルギーならびに環境問題への対策から、更なる低摩擦化の実現、鉛フリーの低摩擦材料の開発が望まれている。近年我々は、ピエゾ効果を発現することが知られている酸化亜鉛(ZnO)のコーティング膜をステンレス鋼などの部材に被覆し、真空環境下で摺動すると、摩擦力が非常に小さくなる現象が発現することを見いだした。そこで、本プロジェクトでは、ピエゾ効果が低摩擦現象を引き起こすメカニズムの解明に挑戦すると共に、潤滑油中にて低摩擦化を可能とするピエゾコーティング膜の創製を目的とした。1昨年度は、ZnO膜の結晶配向性制御技術の確立と、真空摩擦特性、Raman特性、密着性、膜破断強度の評価を行った。また、昨年度は、油中(ヘキサデカン)、油中(添加分子:パルミチン酸有り)の条件下で、結晶配向制御したZnOコーティング膜の摩擦・摩耗特性を測定し、その結果、油中および油中(添加分子有り)において、0.08~0.12の低い摩擦係数を示すことが明らかとなった。これは荷重を大きく、または、摺動回数を多くするに伴って、摩擦係数が下がる傾向を示し、この傾向は特定の結晶配向性を有する((002)面+(103)面)ZnOに限定されており、新たな低摩擦メカニズムが存在することを発見した。今年度は、その特異な現象を発現するコーティング膜の断面TEM観察を行い、その構造と摩擦現象との相関について知見を得た。さらに、ZnOにBNをナノコンポジット化することによる摩擦現象に及ぼす影響について研究した。
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