研究概要 |
本研究は,プラズマ流による細胞死および細胞増殖の発現機構を解明し,革新的なプラズマ医療基盤技術の創成とその学理の構築を目的とする. 平成22年度は,研究実施計画に従い,(1)化学的活性種の濃度に応じて発現する遺伝子の違いや遺伝子の伝達経路の検証,(2)蛍光顕微鏡による経過観察とマイクロプレートリーダーによる細胞生存率計測と細胞活性化の促進抑制についての検証,(3)大気圧プラズマ流の化学種輸送解析,(4)細胞膜中のエネルギー伝達機構の数値解析について行った. 特に,プラズマ流が生成する化学的活性種の影響において,細胞生存率の暴露時間に対する変化,細胞形態の死滅過程,細胞内部に生成される活性酸素の蛍光観察,カタラーゼ添加による細胞生存率の変化,DNAマイクロアレイ解析による遺伝子発現強度相関分布が,プラズマ照射培地と過酸化水素添加培地の間で同じ傾向を示すことを明らかにした.これらの結果より,プラズマ照射培地が細胞増殖阻害を誘引する要因が過酸化水素であることを明らかにした.また,タイムラプス観察により,プラズマ照射培地の細胞増殖阻害効果は細胞周期に大きく依存することが分かってきた.この時,M期にある細胞に特に影響が現れ,またアポトーシス的な死滅過程を示すことが明らかになった.さらに,プラズマ流照射時の気液流動場の解析や生成された化学種の輸送過程を実験ならびに数値解析により詳細に検証した.これより,放電部で発生する15m/s,2000Kの高温ガス流が水面に衝突し水面上に広がる時に,気流との摩擦により水中に流れが形成され,気中から液中に溶解した化学種が輸送されることが明らかになった.これらの成果は,世界でもまだ知見されていない現象でありプラズマ医療の基盤をなす重要な成果である. 本年度では,DNAマイクロアレイ解析,高速度カラーカメラ購入,研究支援者の雇用などにより研究の促進を図った.
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