研究概要 |
本研究の目的は、石炭火力からの大量のCO_2を分離プロセスなしで容易に回収することのできるCO_2循環型の石炭酸素燃焼に特有な高いCO_2濃度下での燃焼機構や、NO_x,SO_x,有害微量元素の生成・消滅機構を、燃焼炉内の局所条件との対応を含めて基礎的に解明し、CO_2回収型石炭燃焼の高度化に資することにある。本年度は、石炭酸素燃焼の極低NO_x化に焦点をしぼって研究を行った。代表的な低NO_x燃焼法である二段燃焼では、まず燃料過濃領域においてNO_x生成を抑制し、燃料希薄領域で完全燃焼を行う。燃料過濃領域で空気比を下げると、NO_x転換率は減少するが、酸素雰囲気下でNO_xに変換されやすいNH_3およびHCNは増加する。したがって、低NO_x燃焼のための最適な空気比が存在する。本年度の成果として、空気燃焼と比較して酸素燃焼の方が多量のOHラジカルが生成され、その多量のOHラジカルにより燃料過濃領域におけるHCNおよびNH_3がほとんど分解されることが示された。つまり、酸素燃焼では、空気燃焼よりも二段燃焼の燃料過濃領域における最適空気比を低く設定することが可能であり、より効果的な低NO_x燃焼を行うことができる。本実験では、二段燃焼における局所条件制御により空気燃焼と比較して酸素燃焼の方がNO_x転換率を40%程度低減できることが示された。さらに、CHEMKIN-PROを用いたシミュレーション結果から酸素燃焼特有のNO_x還元メカニズムを示すことができた。本成果は、従来では達成することのできなかった石炭燃焼の極低NOx化に大きく貢献すると思われる。
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