研究概要 |
本研究では,受動歩行の力学的原理に基づき,ヒトに近い高速で高効率な平地歩行を実際のロボットで実現することを目的とする.歩行の移動効率を高めることができれば,将来的に小さな関節トルクによって理想的な自律平地歩行が実現できる. 上体付き受動歩行の研究の多くは数値シミュレーションだけで,実機実験はほとんど行われていない,本研究では,受動歩行ロボットにヒトの筋骨格系を模した受動的な上体機構を取り付けた.脚長は0.9m,脚質量は10kgである.また,上体は全長0.6m,質量2.8kgである.上体と大腿部は,前後から弾性帯(ウレタン)で連結されている.これらの弾性帯は,1歩行周期前半では,遊脚の振り出し促進(前方弾性帯),支持脚の前方移動の促進(後方),後半では支持脚の前方移動の抑制(前方,上体は後傾)の効果がある.実験の結果,最低スロープ角度(連続歩行が可能な最低のスロープ角度)は,γ=2.3°であった.ここで,移動効率はε=sinγで計算できるので,ε=0.04となる.ヒトの場合は一般的にε=0.2と言われているので,受動歩行の効率の良さが際立っている.ほとんど平坦な歩行路であり,今後小さな関節トルクによる平地歩行が期待できる. また,受動的なバネ-カムによる股関節バネ機構(腰トルク発生装置)を開発した.本機構は,バックドライバビリティを確保し,カム形状により任意のトルク特性が生成できる.なお,支持脚腰トルクや遊脚腰トルクが支持脚膝や遊脚膝の屈伸運動に及ぼす効果に注目し,膝折れやつまずきによる転倒の低減を図った.さらに,本股関節バネ機構をユニットとして配置した歩行支援機を試作した。腰カフをヒトの骨盤に宛がい,テーパー状の脛カフをふくらはぎにフィットさせる.ここで,適切な腰トルクが作用すると,違和感なく遊脚膝の屈曲や脚の振り運動が促進することを実感できる.すなわち,親和性が高くヒトに近い歩容生成特性を有していることがわかった.
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