研究概要 |
本年度は,角膜剛性と内圧に起因した剛性との分離化について,臨床実験に基づき,特に角膜形状変化に焦点を絞り解析作業を行った.非接触眼圧計は空気噴流により角膜に印加力を与えて角膜を変形させ,その圧平面積が広くなった時刻から眼圧値を推定しているが,角膜の性質(剛性等)に個人差があった場合,眼圧値が正しく測定できない危険性がある.この角膜変形の個人差に着目し,非接触眼圧計による空気噴流印加時の角膜変形の度合いを,新たに曲率による評価指標によって表現した.具体的には,高速度カメラで得られた印加時の角膜挙動の映像に画像処理を施すことにより角膜表面のエッジを取得し,そのエッジを最小二乗法により求められた回帰曲線で近似した.関数化されたエッジの曲率と眼圧値との相関を調べることで,角膜形状変化の個人差が眼圧測定にどのように影響するのかを考察した. この評価手法によって調査した結果,若年層にくらべて高齢者層になると平均眼圧には差が見られないものの, 角膜曲率は高齢者層に対して増加する傾向が見られた.このことは,角膜が高齢者になるにつれて硬くなるという従来結果と対立する.この結果は,高齢者になると圧縮方向の剛性が高くなる一方で,曲げ剛性は低くなることを示唆するものと想定される.結果として,高齢者に対して眼圧が低めに計測されることになり,眼科学会に大きな波紋を投げかけることが予想される.
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