研究概要 |
眼圧計測値には純粋な眼圧成分以外に角膜等の構造剛性に起因する圧力成分が介入している.この構造剛性を評価して,眼圧評価を向上させるというのが本研究の目的である.この問題設定に対し,今年度は空気噴流印加時の眼の変形を,眼球全体が移動する変形成分と角膜変形成分に分け,角膜変形成分(眼圧に寄与する部分)だけを抽出した.この成分の中には眼圧成分と構造剛性に起因する成分が含まれるが,眼圧計器で測定された同一眼圧値の眼に対して,この変形成分が大きい被験者の眼は構造剛性が柔らかいと見なすことができる.この考え方に基づいて,この傾向が高く出ると見込まれる正常眼圧緑内障と強度近視を併発している患者に対して,Infomed Consentをとった上で,大阪大学医学部病院の協力を得て,臨床実験を行ったところ,予想通り,同一計測眼圧値に対して,正常眼圧緑内障/強度近視併発患者の変形が大きくなった.さらに健常者との比較を行ったところ,両者の間で,統計的に有意水準5%以内の有意性が認められた.この結果は,正常眼圧緑内障と強度近視の患者の角膜を含めた眼球支持組織が健常者に比べて柔らかい傾向にあることを意味し,両者を併発している患者が多いという医学的知見ともよく一致する.この結果を踏まえて次年度以降の研究につなげていきたい
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