研究概要 |
本研究の目的は,環境に優しい次世代電池電力貯蔵システムの基盤技術を確立することである。具体的には,カスケードPWMコンバータを電力変換回路に採用した電力貯蔵システムを開発する。大学の研究室で実験可能な最大容量である三相200V, 10kW, 20kWhシステムを設計・製作し,その実有効性を実証する。 平成21年度と22年度は,設計・製作した電力変換装置は無効電力変換装置として動作させ、その安定した動作を確認した。さらに18台のリチウムイオン電池モジュール(25.2V 40Ah)の仕様を決定し,購入した。 平成23年度は,三相200V, 10kW, 20kWh 電池電力貯蔵システムを製作し,その基本運転特性を実験的に評価した。その結果、電源電流の総合高調波歪率を3%以下,かつ40次までの各次高調波電流を2%以下に抑制できることを実証した。 平成24年度最終年度であり、製作した電池電力貯蔵システムの運転特性を詳細に検証した。リチウムイオン電池モジュールの充放電電流には本来の直流成分に電源周波数の2倍(100Hz)の交流成分が重畳する。このような交流成分は、カスケードPWMコンバータを電力変換回路に採用した場合には原理的に発生し、蓄電池の寿命に悪影響を与える恐れがある。そこで、蓄電池モジュールに小容量直流リアクトルを直列に接続することによって、交流成分を抑制できた。この抑制効果は事前の計算結果とよく一致した。 配電変電所の二次側(6,6kV)に設置する実システムでは、上位系統(66kV)の送電線に落雷などに起因する瞬時電圧低下(瞬低)が発生する。そこで、瞬時電圧低下時の運転継続性能をシミュレーションで詳細に検討し、最も過酷な電圧低下度100%の瞬低が発生しても、安定した運転継続を実現できることを確認した。この実験検証は未達成であるが、現在、実験検証の準備中である。
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