研究課題
量子ドットにおける電子一光子状態変換を効率的に行ためには、両者を効率よく結合させる「環境」を準備する必要がある。本研究ではその第一ステップとして、半導体量子ドットを金属に埋め込んで金属微小光共振器を作製し、量子ドットから発生した光子を外部へ効率よく取り出す研究を進めた。これまでに、量子ドットを含む半導体ピラー構造を作製し、これをチタン金属に埋め込み、30倍以上の発光増強を観測し、単一光子発生条件を用いて光子の外部取り出し効率の絶対値を見積もる手法を確立して、量子効率8%を見積もった。本年度はより反射率の高い銀に埋め込む方法を開発し、光子取り出し効率として18%を観測した。同時に研究を進めたFDTD法による金属微小光共振器内の電磁界シミュレーションでは、埋め込む半導体を円錐に近い構造にし、集光するレンズの開口数(NA)を0.8程度とすることによって、光子取り出し効率80%が見込めることが示された。今年度の実験ではNAが0.4のレンズを用いており、NAの高いレンズによる光子取り出しも含めてさらに検討を継続中である。量子ドットとしては、従来のGaAs系による波長950nm帯に加え、ファイバー結合を目指して、InP系による波長1300nm,1550nmで発光する単一量子ドットも実現した。一方量子ドットから発生する光子は、量子準位に関するパウリの排他律により原理的には一つの電子状態から一つの光子が発生する。しかし現実には欠陥準位からの発光や、発光後にすぐ準位を埋めるRe-fillingの効果により、背景光子が発生してしまう。このような単一光子発生の純度は、発生光子の2次相関関数g(2)(τ=0)によって評価できる。昨年度g(2)(τ=0)として、0.02の低い値を観測したが、本年は量子ドットの準位より1光学フォノンエネルギーだけ高いエネルギー位置を準共鳴励起することにより、パルス励起ごとに光子が発生する飽和励起条件で0.007、低い励起レベルでは0.0035と世界最小値を観測した。
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