本研究ではスケーラブルな光子デバイス応用を目指して励起子のナノ構造を創り上げる。具体的にはエピタキシャル結晶成長技術によって精密に制御した窒素原子のオーダリングを利用してGaAs中に配列した窒素ペアを作製する。制御された窒素ペアに局在する励起子ナノ構造の局所光応答の基礎物性を明らかにした上で、単一光子・量子もつれ光子対光源、量子ゲート操作など量子通信に利用できるデバイス動作の原理を実証する。そのためには励起子の空間構造の制御だけでなく、放出光の時間的デザイン、すなわち光電場などによる位相制御が必要になる。平成22年度は前年度より明らかにしつつある配列窒素構造(窒素ペア構造)の励起子微細偏光分離構造に対して、磁場などの外場を利用した精密な制御技術を構築した。また、単一光子源の実現に向けて空間分解分光の精密な評価を実施し、単一窒素ペア中心の局所光応答の基礎サイエンスを明らかにすることを目的に研究を推進した。 ◆窒素原子ナノ構造の空間制御 本研究では分子線エピタキシー結晶成長技術を駆使してGaAs(001)ウエファ表面に(2×4)再構成構造を作り、その上に原子レベルで制御してプラズマセルで生成した原子状窒素を吸着させた。本年度は特にGaAsキャップ成長温度を制御して、窒化に最適な温度でのGaAsキャップとGaAs成長に最適な温度でのキャップの比較を行った。 ◆磁場により励起子微細構造の制御と制御に必要な物性パラメターの抽出 磁場を印加することによって励起子微細構造のエネルギー状態や遷移選択則が変化する。これを利用すれば、光子もつれなどに必要な縮退した電子状態を実現できる。磁場に対する励起子微細構造の応答特性を詳細に調べた結果、g因子や反磁性シフトなど磁場による制御パラメターを定量的に明らかにするとともに発光線の起源を同定した。 ◆単一窒素ペア中心からの光子放出特性 単一窒素ペア発光を検出するために顕微分光システムの2次元CCD発光イメージングセンサによって励起子ナノ構造の空間イメージを観測し、ピンホールで切り出したし単一窒素ペア発光の観測に成功した。
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