本研究ではスケーラブルな光子デバイス応用を目指して励起子のナノ構造を創り上げる。制御した窒素ペアに局在する励起子ナノ構造の局所光応答の基礎物性を明らかにした上で量子通信に利用できるデバイス動作原理の実証を目指した。そのためには励起子の空間構造の制御だけでなく、放出光の時間的デザイン、すなわち光電場などによる位相制御が必要になる。本年度はこれまでに明らかにしてきた配列窒素構造、すなわち窒素ペア構造、の励起子微細偏光分離構造と磁場による励起子状態制御技術をベースにして、共振器による輻射特性の制御とスケーラブルな量子ビットを実現するために励起子の配列構造を実現した。具体的には以下のとおりである。 ◆共振器による輻射特性制御【小島、喜多】:窒素を添加した光共振器による光子-励起子相互作用制御を実現するために、光子-励起子相互作用状態を強結合領域にする条件を詳しく調べたところ、強結合領域であることが確認できる真空ラビ分裂を起こすには光共振器のDBRペア層数を10数層積層して数1000のQ値を得る必要がある。また、光共振器を直径10μm程度のマイクロピラーキャビティに加工し、窒素の面内密度を1平方μmあたり100個のオーダーで添加する必要があることが明らかになった。 ◆励起子配列構造の制御【喜多】:窒素の面内密度を1平方μmあたり100個のオーダーで添加するためには、高濃度に窒素を添加する技術を構築しなければならない。窒素添加濃度を1平方μmあたり10000個程度まで増した試料を作製して発光特性を詳細に調べたところ、窒素ペア間の歪相互作用によって空間的に[-110]方向に配列することを発見した。
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