研究課題
考案した新規多層薄膜スロット光導波路をポリマ光変調器に導入し、従来の誘電体導波路では困難であった光をナノ領域の導波路に閉じこめを可能とした。デバイス電極間隔短縮により従来の光導波路構造により電界強度を1桁増加した。本導波路内部に配置した電気光学(EO)ポリマのポーリング効率を最適化することにより半波長電圧(Vπ)を低減し集積化可能とした。代表者が以前実証したハイブリッド導波路ポリマ光変調器は電極間隔8μm及び電極長24mmを有し、半波長電圧0.65Vであった。本デバイス構造を多層薄膜スロット光導波路型にしてポリマ光変調器を作製した。スロット導波路として高屈折率材料シリコン及びTiO_2を用い、スロット導波路間にEOポリマ薄膜を配置した。これらの多層薄膜スロット導波路型ポリマ光変調器への光挿入損失を低減するためにデバイス膜厚を最適化した後光出力を測定した。5mm長さのスロット導波路型光変調器に対する全光挿入損失は18dB(従来の値より10dB以上低い値)であった。これらの実験及びモード計算結果に基づきスロット薄膜間にEOポリマを閉じこめた多層薄膜スロット導波路型光変調器の電極間隔を1μm以下(従来型の1/10以下)とし、印加電界強度を10倍増加することに成功した。時間領域差分法により本光導波路からの出力光モードを計算し、実測した出力モードと比較した結果、計算見積もりと同様の出力を得た。本導波路は通常の光通信用光ファイバを用い12-18dBの低い全光挿入損失(光結合損失+光導波損失)を示したことから、低光挿入損失で超低電圧駆動の光変調器として使用可能であることが分かった。さらに上部及び下部電極に金属を使用しているため、上部電極をマイクロストリップ線とすることにより電極を進行するミリ波のスキンデプス損失を低減可能であり、従来の高ドープシリコン電極を使用したシリコンスロット導波路型ポリマ光変調器(帯域幅<500MHz)に比べて遙かに広帯域光変調化可能であることも見積もった。
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