・三次元LSIには,コスト負担が少ない銅を使用できるマイクロインターコネクト技術を開発することに対する要望が極めて強い.昨年度までに,先鋭形状のバンプ(突起)電極と開孔をもつ電極との組み合わせで銅電極どうしを常温で接合する技術を開発した.一方,この技術ではフォトリソグラフィー工程を追加する必要があり,コスト高を招くことから実用技術としては受け入れ難い.今年度は,先鋭バンプ電極を超音波を印加して接合することを試み,単純な形状の銅電極に対して常温接合が可能であることを示した. ・銅電極表面を1-ヘキサンチオールの自己組織化単分子膜で保護することで酸化防止ができ,常温接合を安定に実現するのに有効であることを示した.これを銅電極どうしの常温超音波接合に応用した結果,電極形成後の放置による接合性の変化を小さくできることがわかった.しかし,接合強度を大きくするには,接合前に単分子膜を除去する技術を開発する必要があることがわかった. ・InPを基板にしたInGaAs化合物半導体による光検出用回路チップとシリコンCMOSを用いた読み出し集積回路チップを,金製の先鋭バンプと超音波接合を用いて常温で積層接続する技術を開発し,320×240画素(qVGA解像度)の近赤外線イメージセンサーの作製に成功した. ・フレキシブルエレクトロニクス用基材であるポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上に形成した配線電極に対して,シリコンLSIを常温で接合できることを示した.機械的強度もシリコンLSIどうしの積層接合と同様であることを示した. ・開発した常温マイクロインターコネクト技術を有機強誘電体メモリー素子に応用し,スイッチ部分に不揮発メモリー機能を導入した三次元再構成論理集積回路を実現することをめざし,PVDF強誘電体薄膜を用いた薄膜トランジスタメモリー素子を試作し,記憶動作することを示した.
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